PDFの活躍

 小悪魔本の作業フォルダの一部だ。PDFは書籍制作に欠かせないものになっている。
これも買ってしまったくらいだ。

FUJITSU ScanSnap S1300 FI-S1300

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 これは,社内でも流行っている。evernoteに右クリックでデータを流せるのも便利だけど,PDFを簡単に作れるのも素晴らしい。
 もっともデザイナーさんからは,PDFデータとプリントアウトされたゲラの両方をいただく。実際の校正では,紙のほうを使う。PDFだと修正箇所の見おとしがあるからだ(経験的に,あ! とあとで気がつく修正の見おとしがある)。フォントの埋め込みも可能だから,印刷所への入稿データになることもある。

 村井純先生が,小悪魔本の監修を引き受けてくださった。その際の条件の1つは,紙は面倒だからPDFでゲラを送信してほしい,というものだった。窓口の村井研究室には,PDFでゲラを送信するのだが,小悪魔本は,全体で300点の画像データの塊なので,適宜ファイル便,データ便などのサービスを利用した。(もっと良い方法もあるけど,ある理由からオーソドックスな方法を採ったのだ)
 ゲラの送料なんかも,何度もゲラが往復しているとバカにならない。PDFがないときは,ファックスで送付作業をしていたこともあったけど,本当にこれは辛かった。それからすると,なんとも便利な時代になったものだ。
 PDFを生成するフリーのソフトも多いし,まさにこれなしでは仕事ができない。
「PDF-XChange Viewer」のページは移転いたしました
 特にこのツールは,お勧めだ。
 これは,株式会社豆蔵の著者の方々から教えてもらったものだ。注釈やら書き込みが自由にできる。とても便利だ。
 ちなみにこの本を作っていたときだ。おかげさまで,これも重版して現在3刷り目。

Trac入門 ――ソフトウェア開発・プロジェクト管理活用ガイド

Trac入門 ――ソフトウェア開発・プロジェクト管理活用ガイド

 漫画で解説しているページもある。僕はもともとこういう本が好きなのだ。

小悪魔フォントのこと

 小悪魔本のレイアウトをどうしようか……と考えていたところ,次の本にヒントを見つけた。

装丁を語る。

装丁を語る。

この本の16ページに

掌にダイヤモンド (Feelコミックス)

掌にダイヤモンド (Feelコミックス)

の装丁について語られている。
 なんとノンブルは手書きの数字をフォントにしたということだ。中身は古い本なので,読むことはできないけど,これを応用してみようとひらめいたわけだ。

 最初は,これらの画像を切り出して,画像をリンクさせることで版面を作る予定だったのだけど,あまりに大変な作業になる。
 ということでデザイナーの伊勢さんが,これらの数字をフォントにしてくれた。「小悪魔数字フォント」の誕生である。これらの数字フォントは,ノンブル(ページの数字)と,節見出しの数字などに使われている。
 この数字フォントのおかげで,小悪魔ワールドが隅々まで染み渡った版面になっているのだ。ちなみに,ローマ数字版もあり,これは前付けのページで利用されている。

レイアウトデザインの決定

 本のレイアウトは様式美だ。スタイルに当てはめることが重要。そして例外がないこと。いろいろなデザインの本があるけど,今回はブログ記事の書籍化なので,あえてベーシックな,オーソドックスなレイアウトにしたほうがいいと思った。要は,ちょっと変わった位置にノンブルをおいたり,柱やツメもそうだ。奇をてらうと,中身に負けると考えたわけだ。
 まずは,こんなものを書いてみた。

 ノンブルは手書き文字とした(これの元ネタは後ほど)。
 上は打ち合わせ時のまとめとして描いたラフレイアウトだ。章タイトル,節見出しなど,見開きで一覧できるようにしたかった。節見出しのほうが長いネームが多いので,バスやら,籏やら中身にネームを流し込みやすいようにした。初稿段階のバージョンはこれをベースにデザインが進んだ。
 デザイン事務所は,BUCH+。女性デザイナーさんがよいと思い,伊勢歩さんに御願いした。
 出てきたラフは次のようなもの。これらはほんとうに初期の段階のものだ。



 この中から,aicoさん本人にベースとなるデザインを選んでいただき,さらに修正を加えたものが次。
 


 これらに,さらに最初に描いたレイアウト指示用紙の内容を加えて,最終的には,こんな具合になった。

 正確には,初稿バージョンと再校正バージョンでデザインの変更がさらに加わることになった。
 デザイナーさんには,かなり負担を強いてしまった(汗。
 個人的には,真っ白ベースに絵というシンプルなものがいいかなと思っていたのだが,大学ノートに落書きをしているような現在のスタイルが,aicoさんとしてマッチしたそうなので,これで作業を進めることにした。
 僕としては,

フーリエの冒険

フーリエの冒険

 とか,
量子力学の冒険

量子力学の冒険

 みたいな本にしたいというイメージがあったのだ。
 やってみたら,案外とノートに落書き風のパターンも雰囲気があってよい。まあ,そんなわけだ。

 

小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記 ――インターネットやサーバのしくみが楽しくわかる

小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記 ――インターネットやサーバのしくみが楽しくわかる

 

 ちなみに,まだ楽天で購入いただければ(2月2日現在),特製付録の小悪魔ドライバーがついてきます。この付録についても後述予定。

 当社編集者諸君,レイアウトデザイン指定は手書きでもいいから自分でやってみてね。いろいろ学ぶところが多いから。
 

書名の件

書名は正直なところ,悩みました。このままこの過激な「小悪魔女子大生」でいくべきか?
 でも,このままやってみようと。というのは,山田真哉さんのこの本をちょうど読んでいた時期だったのです。

目のつけどころ

目のつけどころ

 この本の中で,女子大生会計士の事件簿〈DX.1〉ベンチャーの王子様 (角川文庫)のネーミング由来が解説されています。マクロとミクロ,そしてハードとソフトでマトリックスを作り,それぞれのフェイズで書名を考えるというものでした。「足し算ネーミング」というヤツです。異質な言葉を組み合わせて違和感を出すこと,言い切る! と書かれています。
 私はこういう分析が大好きで――もちろん山田真哉さんの本のファンでもあるのですが――ぜひ,こういう書名の本を作ってみたいと考えていたところだったのです。いつかこういう書名の本を作りたいという希望が意図せずかなうということになってしまいました。ほんとうは自分で考えたかったんだけどなぁ。まぁこれでやってみるかと,気楽に進めることにしたわけです。

競り合い

株式会社ディレクターズの加藤慶代表取締役から返事が届き,さっそく渋谷の事務所に伺いました。マークシティすぐ近くで,モダンなオフィスビルの一角にありました。

……初対面の小悪魔ことaicoさんは,高校生と見間違えそうな小柄な女性でした。某大学の仏文科の学生さんと自己紹介を受けて,愕然。この人はスゴイ! と思いました。絵もさることながら,難しいIT関連の技術体系を自分で理解してから,ブログにまとめていると聞いてさらに驚きました。これならば本当に本にできると思いました。
 実際のところ,ここ数年ブログからの書籍化はあまり成功してなかったので,ちょっと不安がありました。しかし,まあ絵も可愛いし,やってみるかと決意したわけです。

 私が行く前に,すでに某大手雑誌編集部からイラストレーションの依頼が来ていたそうです。そしてやはり同業他社さんも。
 結局みんな同じところ(はてブ)を見ているんですね(笑)。

 で,どこの版元さんを選ばれてもかいません。しかし某大手さんでは,IT書の棚営業は厳しいでしょう。当社ならば,全国津々浦々の書店様でコンピュータ書の営業が可能です。とお伝えしました。どこの版元を選ぶのか,ディレクターズさんに一任したと思います。(けっこう熱く当社メリットを語った記憶はありますけど。汗)

そもそもの始まり

 多くのITギーク同様,はてなブックマーク(通称はてブ)を毎日読むのは,IT系版元の編集者ならば常識ではないでしょうか。私も,毎日チェックしています。
 そんなわけで,2010年7月の某日,いきなりIT分野でランクアップした「小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記」を見て,驚愕の一言。これはスゴイと。しかも内容が正しい。
絵はとにかく可愛いのだけど,それだけではなかったのです。本気でインターネットの基礎に取り組んでいるのです。感動しました。さっそくディレクターズさんにメールをしてみたのです。会いに行くにあたり,小悪魔agehaみたいな女性が出てきたらどうしよう……と不安にもなりましたが。